ヒルシュスプルング病類縁疾患とはどのような病気ですか?
「ヒルシュスプルング病」は直腸や大腸に生まれつき存在するはずの神経細胞が欠如することで腸の蠕動運動が悪くなる病気です。腸に神経細胞が存在するにもかかわらず、「ヒルシュスプルング病」のように腸の蠕動運動が著しく悪くなる複数の病気をあわせて、「ヒルシュスプルング病類縁疾患」と呼びます。薬によって症状を改善させることができるものや手術により軽快するもの、自然治癒傾向のもの、有効な治療法がなく予後が悪いもの、など様々な特徴を持った7つ病気が含まれています。
ヒルシュスプルング病類縁疾患の患者さんはどのくらいいますか?
本邦10年間(2001年から2010年まで)の調査では、日本全国のヒルシュスプルング病類縁疾患数は、およそ230人でした。ヒルシュスプルング病類縁疾患は7つの病気の集まりですので、それぞれの数はさらに少ないことになります。それぞれの病気の人数については、「病気について-ヒルシュスプルング病類縁疾患とは?」のページをご参照ください。
ヒルシュスプルング病類縁疾患の原因は何ですか?
ヒルシュスプルング病類縁疾患の原因はその一部でしかわかっていません。ヒルシュスプルング病類縁疾患の中で、巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症と慢性特発性偽性腸閉塞の一部の患者さんに関しては、遺伝子の変異が病気の原因であることがわかっています。しかし個々の遺伝子の変異がどのようにして病気の発生に関与しているかについての詳細はまだわかっていません。それ以外の原因については様々な説がありますが、まだはっきりと証明されたものはありません。
ヒルシュスプルング病類縁疾患はどの科で診てもらえますか?
小児期に発症する病気であるため、「小児外科」「小児科」が診療に携わります。実際には「小児外科」で治療されることがほとんどです。ただし小児期以降は、「消化器内科」「消化器外科」などで治療が行われることもあります。
ヒルシュスプルング病類縁疾患に対してどのような検査をおこないますか?
まずは症状をもとにおなかのレントゲン検査や消化管造影検査が行われます。必要に応じてCT・MRIといった画像検査を行うこともあります。ヒルシュスプルング病類縁疾患の他に原因となる病気がないかどうかや、組織の一部を顕微鏡で調べる病理組織学的検査の結果を組み合わせて、最終的な診断に至ります。病理組織学的検査には、おしりの穴から直腸の粘膜の一部をちぎり取り、特殊な染色をして顕微鏡で観察する検査(直腸粘膜生検)や、手術の際に採取した腸の一部を顕微鏡で観察する検査(腸管全層生検)があります。残念ながら一部に、確定診断が困難な場合もあります。また診断目的とは別に、レントゲン検査や消化管造影検査、血液検査などによって患者さんの状態を調べていきます。
ヒルシュスプルング病類縁疾患ではどのような症状や健康上のトラブルが起こりますか?
新生児期から小児期までに、消化管の蠕動不全で起こるおなかの張りや痛み、排便困難といった症状が出ます。症状が強くなると嘔吐や呼吸困難をきたします。内容物がたまって拡張した腸が破裂してしまうこともあります。腸の中で細菌が異常に増殖して腸炎になったり、細菌が全身に広がって敗血症になることもあります。水分や食事の摂取が困難な場合は、脱水や栄養失調が起こります。このため様々な方法で水分補給や栄養補給を行う必要がありますが、特に点滴による栄養(静脈栄養)が必要となる場合には、点滴の管(カテーテル)の閉塞や破損、感染といったトラブルが起こることがあります。腸の機能が悪いことや栄養が不十分であることによって、肝臓に障害が出ることもあります。以上のような多岐にわたる問題が生じる可能性があり、中には命にかかわる問題も少なくありません。
ヒルシュスプルング病類縁疾患は最終的には治りますか?
ヒルシュスプルング病類縁疾患の一部の病気については、手術などの治療により治癒することができます。また一部については、お薬などの治療によって症状をおさえることができます。また、はじめは激しい症状が出るものの自然に治っていくものもあります。一方で、根本的な治療が存在しない病気もあります。特に、「腸管神経節細胞僅少症」「巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症」「慢性特発性偽性腸閉塞」の3つの病気については、有効な治療がなく生命が脅かされる危険性もあります。