その他の疾患について

難病に指定された3つの病気(腸管神経節細胞僅少症・巨大結腸腸管蠕動不全症・慢性特発性偽性腸閉塞症)のほかに、ヒルシュスプルング病類縁疾患には4つの病気があります。いずれも生命予後の良好な病気です。

壁内神経節細胞未熟症

新生児期から著しい腸閉塞症状で発症します。この時点では腸管神経節細胞僅少症などとの区別は、必ずしもつきません。多くの場合、生まれてすぐに腸閉塞症状を緩和させるために人工的な腸の排泄口(ストーマ)を作る必要があります。
この手術の時に腸の一部を採取します。この腸の一部を処理して顕微鏡で組織を観察することで、診断が確定します。腸の神経細胞の集まる“神経節”では神経節全体の大きさは正常で神経節細胞の数も正常ですが、個々の神経節細胞の大きさが小さいのが特徴です。これは神経節細胞が未熟な状態であることを表しています。
腸管神経節細胞僅少症などとは異なり、生後数か月で消化管蠕動機能は改善し、ストーマを閉じることができます。未熟だった神経節細胞が成熟するためです。生まれた直後の状況を乗り切れば、多くの場合、生命予後・機能予後ともに良好な疾患です。

※各治療法については「治療について」のページもご参照ください。

腸管神経系性異常症

新生児期または乳児期に、ヒルシュスプルング病と類似した結腸の通過障害で発症します。ヒルシュスプルング病の診断として行われる、“直腸粘膜生検“という検査によって診断されます。この検査はおしりの穴から直腸の粘膜の一部をちぎり取り、特殊な染色をして顕微鏡で観察する病理学的検査です。ヒルシュスプルング病では直腸の神経細胞が存在せずに、直腸の外から入り込む神経線維が増えているのが特徴ですが、本症では巨大神経節細胞と呼ばれる異常な神経節細胞の存在、神経節が大きいことに加えて、ヒルシュスプルング病と同様に直腸の外から入り込む神経線維が増えている、という特徴があります。
このような病理学的検査の所見が、先天性の異常なのか、それとも便秘などによる二次的な変化なのかはわかっていません。多くの場合、下剤や浣腸などの保存的治療によって症状をおさえることができます。

腸管分節状拡張症

腸の一部分のみに先天性の拡張が認められる病気です。拡張した腸では神経細胞の異常を認めません。まれな疾患であり、患者さんごとに症状や病変の部位、合併奇形の有無などに関して多様性が見られます。原因は全くわかっていません。
症状も様々ですが、主に腹部膨満や嘔吐といった症状で発症します。中には胎児超音波検査による出生前診断によって発見されるものもあります。多くの場合、拡張した腸管の切除によって症状の改善が認められます。

内肛門括約筋無弛緩症

ヒルシュスプルング病では、直腸の神経細胞が存在しない病気です。排便時にはたらく筋肉のひとつである内肛門括約筋の弛緩は、直腸の神経細胞によって制御されているため、ヒルシュスプルング病では同筋肉の弛緩が悪く、このことと消化管の蠕動不良により種々の症状を呈します。
直腸に神経細胞が存在するにもかかわらず、内肛門括約筋の弛緩が悪く難治性の便秘をきたす疾患が内肛門括約筋無弛緩症です。非常に稀な病気で過去に行った調査では10年間に数例程度が登録されました。しかし小児慢性便秘症の一部に本疾患が含まれている可能性はあります。
治療は下剤の投与や浣腸といった内科的治療に加えて、内肛門括約筋切除術やボツリヌス毒素注入などが行われています。多くの場合、生命予後は極めて良好な病気です。